紙面完成イメージを先取りする割付作業
弊社では、ご要望に応じてお客様の広報紙に合った「割付用紙」をお渡ししています。以前のコラム(第4号)では使い方についてお話ししましたが、今回は、割付用紙を取り巻くこれまでの歴史についても簡単に見てみます。
割付用紙は設計図
「割付用紙」とはレイアウトを行うための用紙、いわば設計図や指示書です。文字・写真・イラスト・見出しの寸法などの詳細な指示を割付用紙に書き込みます。さらに、この指示通りにパーツを貼り込んだ厚手の用紙を「版下台紙」といいます。
活版印刷時代の1970年頃までは、この割付用紙をもとに、組版担当者が版を製作しました。活版印刷とは、鉛でできたハンコのような文字を一文字ずつ手作業で並べて版をつくり、それにインクを付けて用紙に転写する印刷方式のことです。
割付用紙と版下台紙は同じもの
次に写真植字(写植)が主流となった1980年頃から、字組・段組に合わせて写植を貼り込み、割付用紙と版下台紙が同一のものとして作成されるようになりました。さらにデジタル普及後(ワープロ等)には、設定通りの字組・段組で出力して、切り貼りすることも可能になりました。
現在では、パソコンで印刷物をつくるDTP(デスクトップパブリッシング)化が進み、版下台紙そのものを作成することは少なくなりました。つまり、今までレイアウトから版下制作までそれぞれの職人がおこなっていた工程を、1人でできるようになったのです。
現在でも手作業の割付が基本です
そんななか、今でも割付用紙は活躍しています。割付用紙には、文字サイズや行数、段数が方眼紙のように印刷されているため最適な文字数が分かり、レイアウトにも専念できて、作業が大幅に短縮されます。さらに、モニター上だと大きさの感覚を掴むのが難しいですが、原寸の割付用紙を使えば実際の紙面に近いイメージでレイアウトできます。
また、弊社ではお客様の元への「訪問割付」も行っていて、その時の割付作業は全て紙の上でおこないます。字数計算やパーツの切り貼りも電卓や手作業なので、一見データ入力した方が速そうに思うかもしれませんが、様々な原稿(手書き、FAX、生写真など)が混在している現場で、お客様に完成イメージを見ていただくには、これが最短なのです。実際の版下制作もこの割付用紙通り行います。
DTP現場においても「版下」「組版」などの用語が今も残っているのが面白いですね。今後も印刷の世界は様々な変化があるかもしれませんが、デジタル・アナログそれぞれの長所を活かして、紙面づくりに取り組んでいきたいです。
写真=今でも割付用紙を使っておこなっている編集作業(兵庫県土建一般労働組合「建設ひょうご」)
(社報『紙ブログNEWS』2022年正月 第46号)